宮古島の秘郷・大浦部落

大浦(うぷら)は宮古島の中心地から車で10分。市内にも近く、古くからある由緒ただしい部落です。 それなのに、島の人々にも「大浦ってどこにあるの?」と言われてしまう不思議なところ。 観光名所はないけれど素朴で楽しい大浦部落に住む、早期退職オヤジの暮らしを紹介します。 (注:沖縄では集落のことを部落と呼びます。差別的な言葉ではありません)

Category:シュノーケリング・素潜り > 安全対策

8月24日にイムギャーマリンガーデンで、シュノーケリング中の観光客の親子3名が高波につかまって沖合に流されましたが、幸い無事に救助されたそうです。

イムギャーマリンガーデンは天然のプールのようになっていて、普段は安全な場所ですが、外洋から強いうねりや波が入っている時には、赤い矢印の橋の下に外に吸い出す潮の流れが発生します。
グラフィックス2(Google Mapより)
この橋の付近は魚の多いところなので、海が荒れている時に魚につられて橋の下に近寄ると、あっという間に外に吸い出されます。

24日は、ちょうど先島諸島の南を台風が通過していました。
宮古島も強風圏内にはいっていて陸上でも20m以上の風が吹いていましたし、海上には高波・波浪警報がでていて遊泳は控えるように、TVの天気予報などでも言ってましたね。
1911-00
(24日はちょうど石垣島の南を通過中でした)
私は当日のイムギャーの様子を見たわけではありませんが、この橋のあるあたりは外洋からの強いうねりが当たって、かなり強い波が砕けていたはずです。

なんで、そんな状態の海に入ろうとするのか?まったく理解に苦しみます。
命を賭けてもインスタ映えする画像が欲しいんですか?

宮古島は毎年、水難事故による死者がでています。
インギャーでも、毎年、シュノーケリング客が流される事故が数件発生しています。
そして、それはどれも台風の後の荒れた海で起きています。
内地だろうが沖縄だろうが、台風後のうねりが入ってる海で海水浴をするのは無謀な行為であるのは常識でしょ?

行政でもフリーペーパー、観光案内などで注意を呼び掛けていますが、海難事故は毎年後を絶ちません。

海が荒れているときに海水浴やシュノーケリングをするなんて、吹雪の冬山にハイキングにいくのと同じくらい、バカげた行為です。

助ける方だって命がけなんです。
ロクに海のことも知らないのに、台風が通過中の海に(しかもインギャーは台風の通過している南側です)子供を連れて入るなんて、子供を殺しに行くようなものです。

もう、観光客の方々は、海を甘く見るのもいい加減にしてください!

このブログの過去記事に、シュノーケリングの安全対策の記事を書いています。
ぜひこれを読んで、海の恐ろしさを肝に銘じてください。
第1話 シュノーケリングは危険なスポーツ
第2話 サンゴの海は内地と別物

シュノーケリングは手軽にできるマリンスポーツですが、シュノーケリングを安全に楽しむことは決してお手軽でもお気軽でもありません。
特にお子様連れの方や、普段から海に親しんでいない方は、あらかじめ関連書籍などで正しい知識を持つくらいの努力はしてください。

シュノーケリングなどのマリンスポーツをなさる方は、SNSなどで、このブログを拡散していただけると嬉しいです。
一人でも多くの人が海に対する正しい知識を持って、安全にマリンスポーツを楽しまれることを願ってやみません。

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海で出会ったら怖い生き物といえば、サメ!
と、思われている方も多いと思いますが、実はサメはそれほど危険ではありません。
サーファーが襲われたという話は良く聞きますが、ダイビング中にサメに襲われたという話は、あまり聞きません。

ダイビング中に見る多くのサメはネムリブカ(ホワイトチップ)やサンドタイガーシャークのように人間を襲いませんし、攻撃性の強いイタチザメも人間にいきなり襲い掛かってくることはないようです。
スピアフィッシングをする人が獲物を腰にぶら下げていて、それを狙ったサメに噛まれることはあるようですが、血を流すようなものを身に着けていなければ、ほとんど問題にならないでしょう。

私は小笠原の二見湾で2mオーバーのメジロザメに後ろをつけられたことがありました。
遠くにシルエットが見えたので、海岸に戻ろうとゆっくり泳いでいた時に、振り返ったら1mくらい後ろに!
こーゆー時は慌てると相手も興奮するので、ゆっくりと振り返って睨みつけたら、すーっと離れていきました。その後、海岸につくまではビクビクでしたが(笑)
後から聞いたら、近くの生け簀から逃げる魚を狙うサメがいるところだそうで、生け簀のそばでは泳がないほうがいいですね。

では、海でなにが怖いかといえば、それは何といってもクラゲです。

特にハブクラゲに刺されると、すぐに適切な手当てをしないと患部が壊死しますし、重症の場合には意識混濁、呼吸困難、心停止で死亡することもあります。
良く知られているカツオノエボシも危険なクラゲで、刺されると激痛が走るのはもちろん、二度目に刺された時にはアナフィラキシーショックで死亡することもあります。
これらのクラゲはとても長い触手をもっていて、本体が見えなくても刺されますし、触手が身体に巻き付くと全身のあちこちが刺されます。

見つけて避けるのはほとんど不可能なので、シュノーケリングや素潜りをするときには、極力肌の露出を少なくすることが重要。
水着でシュノーケリングをしていて、こんな触手に絡まれたらと思うとゾっとします


ハブクラゲとカツオノエボシはよく混同されるんですが、沖縄のビーチにおいてあるクラゲに刺された時にかけるお酢は、ハブクラゲだけに有効で、カツオノエボシに刺された時には逆効果です。
でも、どっちに刺されたかなんてわかりませんよね。とにかく浜に戻ってすぐに水で洗い流して(手で触ってはいけません)、病院に行きましょう。
ショック症状を起こしていたら、即救急車を呼びましょう。

これらとは別に、カツオノカンムリという猛毒のクラゲがいます。
鮮やかな青色や藍色をしたプラスチックのような感じです。
P4070226
これは、カツオノエボシと同様に海面に浮いていて、風に流されて浜に大量に打ち上げられていることがあります。
P4070225
これを見たら、間違っても触らないこと。
それに、浜に打ち上げられているということは、海にもいるわけですから、絶対に海に入ってはいけません。
似たような形でカツオノエボシが打ち上げられていることもあります。
綺麗だけど、うかつに触らないようにご注意くださいね。

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シリーズ連載3回目です。
海での安全対策をしっかりご理解いただくには相応の分量が必要ですし、順を追って説明せずに安易にノウハウを伝えても、本当に役立つことにはならないと思うので、一回に読むのに負担にならない文量に分割して配信しています。
小出しにしているようで申し訳ございませんが、どうぞ気長にお付き合いください。
昔から「生兵法は怪我の元」というように、小手先のノウハウだけを知っていても大自然の力の前には無力です。ノウハウを知ったことで自分は安全だと慢心することほど怖いことはありません。
安全対策に関しては何よりも「自然に対する謙虚な心構え」が大事ですので、ぜひ過去記事からお読みくださいね。
第1話 シュノーケリングは危険なスポーツ
第2話 サンゴの海は内地と別物

前置き
ここまでマスク、シュノーケル、フィン(三点セットといいます)を使って海で泳ぐことを「シュノーケリング」という言葉でお話してきましたが、「素潜り」「フリーダイビング」という言い方もあるのはご存知ですね。
拙文では、シュノーケリングは「三点セットを用いて海面を泳ぐことで、海に潜らないもの」の意味で使っています。
海に潜る潜水行為を伴うものは「素潜り」として、シュノーケリングとは別に説明いたします。
フリーダイビングは純粋な競技ですので、これに興味のある人はフリーダイビングの国際競技を統括するA.I.D.Aの日本支部である日本フリーダイビング協会(A.I.D.A Japan)が、国内競技の運営・実行、フリーダイビング団体の交流などを行っているので、まずはそちらにお問い合わせください。各種講習会などの情報も掲載されています。

離岸流への対策と対処
対策と対処と言っても、その人の技術や練度によって能力が異なるので一概には言えませんので、レベル別に記載します。
大原則は「危険な海には入らない」ことです。海の危険性については前回記事をもう一度お読みください。

絶対厳守事項
基本は「君子危うきに近寄らず」です。人間は海が許してくれる時にしか海に入ることはできません。
波が強いときは潮流も強いので、波が高い日は海に入らないことが最も大事です。

・台風が接近している時、台風が通過した後3日~1週間(台風の強度、速度によってかわります)、波浪注意報、高波注意報などが出ている時は絶対に海に入ってはいけません。

・ドロップオフに高波が立っている時は海に入らない。
P5220260
沖のドロップオフに高波が立っていますが浜辺の波はこの程度です。大したことがないように見えますが、この見た目に騙されて多くの観光客が犠牲になっています。
この場所でこの海況ですと浜から100m沖に出ると強烈な流れに吸い出されて戻ってくることは非常に困難です。同じように見えても、場所によって思わぬ危険が発生していることがあります。
ドロップオフの波は干潮時には高く、満潮時には低くなるので波の高さの判断には満潮・干潮の時間を確認しておくことが重要です。

・一人では海に入らない。二人でも初心者連れ、子供連れは一人より危険と思ってください。相手がパニックになったら道連れになります。シュノーケリングサービスの利用をおススメします。

・どこの海に行くか、宿やホテルの人に告げておく。(万一流されて漂流した時に、誰も知らなかったら探しようがありません)

気象概況をネットなどで調べ、2m以上の波が出ている時は海に入らない。1.5mでも危険です。

一般的注意
【超重要】自分が流される方向を常に確認する。
離岸流に流されるケースで最も多いのは「お魚を追いかけていたら離岸流に流されていた」というものです。
これを防ぐためには、フィンキックをやめて海面に浮いて海底の目標に視線を固定し、自分がどちらに流されていくかを確認しましょう。離岸流は幅が10m程度のものもあるので、ちょっと場所を変えただけで強い流れにつかまることもあります。海に入った時だけでなくシュノーケリング中は常に注意を払うことが必要です。
流れに向かって泳ぐ時は額に水があたり、なによりも進みづらいので、慣れると感覚的にわかります。怖いのは流れに乗ってしまった時で、気持ちよく泳いでいたら思ったよりも浜から離れてしまい、あわてて戻ろうとすると全く前に進まず、必死にフィンキックをしているうちに疲労困憊してパニックをおこして溺れてしまうというのが、離岸流に流されて溺死する事故の典型的なパターンです。
常に自分がどちらに流されているかに注意を払ってください。

【超重要】離岸流に向かって泳がない
離岸流に流されたと思ったら、絶対に離岸流に逆らって元の場所に戻ろうとしてはいけません。
離岸流の流れは、オリンピックの水泳選手よりも速く、フィンをつけていても抗うことはできません。
幸い離岸流の多くは幅10mから20m程なので、流れに対して直角に泳げば、離岸流から逃れることができます。
オーストラリアのボンダイビーチで離岸流に流されて死にかけた人の話
それでも流されるのであれば、離岸流が弱まるところまで流されてしまい、流れが弱まったところで浜と平行に泳いで向岸流を探しましょう。元の浜に戻れそうにない時には、隣の浜や漁港に上がるようにしましょう。
どうしても離岸流から抜けられなかったら、そのまま外洋に流されてください。最悪でもドロップオフを超えれば離岸流は弱まります。浜に戻れそうになければ崖の下でもいいので、確実に海から上がれるところに逃げてください。そこで待っていれば必ず捜索隊が探しに来てくれます。

注:特殊な地形では潮が渦を巻いて抜け出せなくなる場所もあります。石垣島の吉原ビーチのVゾーンは、このような潮目が立つことで有名です。
宮古島では、私はアラマンダホテルのインギャーコーラルリゾートの沖合のリーフエッジ(シュノーケリングでは絶対に行ってはいけない場所です!)で素潜り中に、強いダウンカレント(海底に引きずり込まれるような流れ)を経験したことがあります。インギャーコーラルリゾートの前の浜も、横に強い流れが発生するので、シュノーケリングには危険な場所です。
このような特殊な場所もあるので、地元の人に聞いて情報を収集することが大事です。

・一般的に、波が立っているところは沖から浜に向かう向岸流、波が無く表面がざわついているところは岸から沖に向かう離岸流が発生しています。見た目で正確に判別することは非常に困難ですが、ある程度の想定は可能です。

・計画を立てる
なるべく高いところから海を見て、流れを確認します。といっても素人の見た目では流れはなかなかわかりづらいものですが、海岸の地形や、どちらにイノーが広がっていて、どちらにドロップオフが伸びているかという地形や、どこに波が立っているか、どこに離岸流が発生しそうか、といった概観を確認して、頭の中に地図を描きましょう。
流れがわかれば流れの上から下に向かって泳いで浜にあがって歩いて元のところに戻る方が、泳いで戻るよりも楽です。
入ったところに上がってこなければならない時には、流れの上に向かって泳ぎ始め、流れに沿って帰ってくるほうが体力的にも楽で安全です。
浜の両側がイノーの切れ目になっている時は、イノーの切れ目側からイノーの中心に向かって泳ぐほうが、外洋に押し出される危険が少なくなります。
また、離岸流に流されて元の場所に戻れない場合の避難経路として、隣の浜や漁港など、逃げられる場所を想定し、確認しておきましょう。浜がなければ崖の下でも良いので海から上がって待っていれば、必ず捜索隊が探しに来てくれます。海の中で体力を無くしてしまうことが最も危険です。
事前にグーグルマップの画像で泳ぐところを確認しておくと、周囲の地形やイノーやドロップオフの地形が確認できます。

・浜を常に確認する
宮古島には幅数mの小さな入江がいくつもつながったような場所があります。そこから泳ぎ始めて、沖に出ると、どこが自分の入った入江だかわからなくなることがあります。常に自分が海にはいった場所を確認しながら泳ぎましょう。
どこだかわからない

・潮汐表をみて満潮・干潮の時間を確認しておく
満潮、干潮を挟んだ前後1時間は潮の動きが止まる「潮どまり」といって、もっとも安全に泳げる時間帯です。できれば潮どまりを狙って泳ぐのがベストです。大潮の時は干満の差が激しく、潮の流れも強くなります。イノーの中の流れは一般的に上げ潮(干潮から満潮になる時)よりも下げ潮(満潮から干潮になる時)の方が強くなります。
各地の潮汐は気象庁のホームページで確認できます。南西諸島方面はこちら

・岬の突端や裏側(例:砂山ビーチ)、イノーが形成されずに外洋の潮流が直接あたる浜(例:渡口の浜)、島と島(小島や岩礁も含む)の間の瀬戸(例:前浜、池間大橋の下、東平安名崎の東側)などは、複雑な潮流や強い潮流が発生しやすいところで危険です。

・風やうねりが当たる海岸の反対側で泳ぎましょう。強い南風が吹くときは、南の海岸には風で押された波が当たるので南風の当たらない海岸のほうが海況が穏やかです。

・水着に三点セットは危険
近頃はインスタ映えを意識してか、水着に三点セットを付けてシュノーケリングをする女性が増えています。中にはビキニにロングフィンで素潜りをしている女性まで見かけます。
プロのフリーダイバーやダイビングメーカーのイメージビデオを見て真似しているのでしょうが、あれはあくまでもプロモーションのイメージビデオです。周りにはカメラマンやセーフティースタッフがいて、すぐにボートに上がれる安全な状況で撮影しています。
水着に三点セットの何がいけないかというと、体温の保持ができない、クラゲなどの有害生物から身体を守れない、事故発生時に身体を保持する浮力体がない、海面移動で背中が日焼けする、などなど良いことは一つもありません。
浜から海に入って沖にでて泳いでいるうちに体温が奪われて足が攣ったり、低体温症になったら浜に戻ってくることは困難です。万一、水着のままで外洋に流されて漂流してしまったら、捜索隊がくるまで体温が持ちません。水着でシュノーケリングをすることは、とても危険です。

かつてイタリアのフリーダイビングチームと一緒にボートで素潜りを楽しんだことがありましたが、彼らは夏の南イタリアの海でも、ボートに上がるとすぐに体を拭いてフード付きのジャージ上下にウインドブレーカーを着用し、頭にはニット帽を被っていました。
もちろん海の中ではフード付きのウェットスーツを着用です。
私が海パン一丁でボートの上をブラブラしていると、「いつまでもそんな恰好でいるんじゃない」とチーム監督に叱られました。その理由は、耳や副鼻腔、関節などを冷やすとフリーダイビング競技に致命的な悪影響があるからです。まともな競技者であれば、そのような身体管理は当然のことですね。
水着でシュノーケリングや素潜りをするのはバカのやることです。水温が28℃以上ある海でも長袖のラッシュの上下にライフジャケットか、薄手のウェットスーツの上下を着用しましょう。

レベル別対処法
初めてシュノーケリングをする人
・マスク、シュノーケル、フィンの三点セットを付けるのが初めてという人には、定評のあるシュノーケル・サービスでシュノーケリングの講習を受けることを強くおススメします。講習を受けずに、いきなりシュノーケリング・ツアーに参加することは勧められません。機材の扱い方を正しく教わってから、ツアーに参加しましょう。
初心者だけのグループや、ひとりでレンタル機材を借りてシュノーケリングをすることは、絶対にやめてください。
ウソのような話ですが、初めてシュノーケリングをする方にマスクを渡したところ、鼻の穴を出した状態でマスクをかぶって海に入った人がいました。本人いわく「競泳のゴーグルみたいにすると思った」と。
また、シュノーケルをスキューバダイビングのレギュレーターのように「水中でも息ができる」と勘違いした人もいました。
知識の無い人は何をするかわかりません。シュノーケリングをする前に、必ず安全なところで機材の使用法を習熟してください。

・まずは機材の正しい使い方を学ぶ
水難事故の原因のほとんどは、何らかの原因でパニックを起こし、肺に水が入ってむせ返り、呼吸困難になって溺れるというパターンです。
パニックを起こす原因はさまざまですが、初めての方や初心者では、マスクやシュノーケルに不意に海水が入ってきただけで簡単にパニックになります。
ですので、まず最初はマスクやシュノーケルに水が入ってくるのに慣れることが大事です。
シュノーケルとマスクの使用法は次のように練習します。

フィンを付けずにマスクとシュノーケルとライフジャケットだけで腰くらいの深さの海に入り、顔を水面に着けます。その状態でシュノーケルでの呼吸をしてみましょう。
シュノーケルの呼吸がストレスなく出来るようになったら、息を止めて顔をシュノーケルを付けた側の反対に向けます。するとシュノーケルの先から水が入ってきます。水が入ってきたのを確認したら、顔を元の位置に戻して一気に息を吐いて、シュノーケル内の水を吹き出します。鯨の潮吹きのようなイメージで吹くといいでしょう。
シュノーケル内の水を吹き出したら、ゆっくりと少しづつ←ここ、重要です! 息を吸います。
この時に急いで息を吸うと、シュノーケル内に残っていた水滴や、吹き出し切れなかった水が肺に入ってむせてしまい、パニックの原因になります。スッ、スッ、スッっと歯の隙間から少しづつ息を吸うようにして、水が残っていても肺に入らないようにします。
実際のシュノーケリング中もいきなり息を吸ってはいけません。まず息を吐いて、知らぬ間にシュノーケリング内に水が溜まっていないかを確認してから、ゆっくりと息を吸うようにします。間違っても海水が喉の入るようなことがないように、注意に注意を重ねましょう。

次に顔を水面に着けたまま、マスクの下を少し持ち上げてみます。すると持ち上げたところから海水が入ってきます。この時に鼻から息を吸わないように注意してください。基本的にシュノーケリング中は口だけで呼吸するように心がけましょう。鼻で呼吸するとマスクが曇る原因になります。
マスクの中に水が溜まったら顔を上げて、マスクの下側を持ち上げてマスク内の水を出して、マスクを元に戻します。

以上が問題無くできるようになったら、足を伸ばして蹴伸び姿勢で海面に浮かんでみましょう。この時も背の立つ深さより深いところに行ってはいけません。
蹴伸び姿勢を取って顔を上げると、顔を海面上に上げたまま浮かんでいることができるはずです。ライフジャケットを付けていると上半身に浮力が作用するので、簡単に顔を海上に持ち上げていることができます。本来ライフジャケットは顔が水に沈まないような体勢で水に浮かぶための道具ですから、これは当然のことです。これで、常に顔を上げていられることを確認します。いざとなったら慌てずにこの姿勢を取れば良いということを身体に憶えさせることが肝心です。

これができたら顔を前後左右に振って、シュノーケルに水が入ってくる感覚を確認して、シュノーケル内の水を吹き出す練習をします。
次に、マスクに水を入れ、蹴伸び姿勢から顔だけ水面にだしてマスク内の水を排出する練習をします。

以上が問題なくできるようになったら、背の立つ深さでフィンを履いて、実際に30分~1時間ほどシュノーケリングをやってみましょう。
それでストレスなくシュノーケリングができるようになったら、ツアーに参加のに最低限の技術が得られたと思ってください。
もちろん、この練習は経験者の指導下で行ってください。絶対に一人でやってはいけません!

注意:シュノーケルの基本は「吐くときは強く、吸うときはゆっくり小刻みに少しづつ」です。
海に慣れていない人は無意識に海への恐怖を感じているので、呼吸が浅く、速くなりがちで、心理的なストレスが強まると過呼吸になってパニックを起こすことがあります。
ストレスを感じたら、息を大きく吐いて気持ちを落ち着けましょう。(呼吸と心理状態には密接な関係があります。息を吸う時に緊張し、吐いた時に心が安定します。試してみてください)


・ライフジャケットは必ず着用
私はライフジャケット(シュノーケリング・ベスト)はシュノーケリングを楽しむためにベストの装備とは考えていません。ライフジャケットは行動の妨げになることも多いので、ウェットスーツを着用する方が適切だと思います。ライフジャケットはウェットスーツに較べて頭を上に出しやすいので、初心者には安全な面もあります(そのぶん、泳ぎにくい)。ウェットスーツを着用せずに初めてシュノーケリングをする人には必須の装備です。絶対に着用してください。


・子供連れの場合
これはシュノーケリングの経験がある親が子供を連れて行くというケースがほとんどだと思いますが、ご自身の経験、技術を良く考えてください。
子供がパニックを起こしてしがみつかれた時に、安全に子供を連れ帰るだけの自信がありますか?
一人で二人の子供を連れている場合、二人がバラバラな方向に泳ぎ出したらどうしますか?
気が付いたら子供がグッタリと意識を無くしていた場合の対処法はご存知ですか?
子供は(大人でも)背の立つ深さのところでも溺れます。大人しく浮かんでいると思ったら意識が無かったということも有り得ます。
対処に自信がないならば、迷わずにシュノーケリング・サービスを利用してください。

・経験者の友人と行く場合
これは、その「経験者」がどれだけの経験を持っているかによります。
最低でも自分の機材をもっていて、過去数年にわたって毎年数十回の素潜り(シュノーケリングではなく「素潜り」です)やスキューバダイビングをしているような人で、心肺蘇生法の講習を受けたことがある人でないと信用に足りるとは思えません。
一番信用できないのは「大丈夫、大丈夫。俺が教えてやるから」といって、水着にレンタルの三点セットを付けただけで、いきなり足のつかないようなところに連れて行く人です。事故が起きたら何の対処もできないどころか、共倒れになる危険性があります。
もし私が、初めて三点セットを使用する人を海に連れて行くとしたら、最初は腰くらいの深さのところで三点セットの使用法を最低でも半日がかりで教えます。
その上でシュノーケリングポイントは容易に浜までもどってこられる水深3m以浅のところを選び、最低でも自分の他に経験者を一人随行します(緊急時に即座に浜まで助けを呼びにいかせるためです)。
初心者にはライフジャケットを必ず着用させ、救命ブイか浮輪を携行します。


(ブイは球形のものよりも、このような長いものの方が掴まって休憩しやすいのでおススメです。旗がついているので舟や他者からの視認性に優れています。空気を抜けばコンパクトに収納可能です)

プロのガイドでもそこまではやらないかもしれませんが、私はプロでないからこそ、そこまでの準備が必要と考えます。
それだけの準備ができないときは、シュノーケリング・サービスにお願いします。

数回のシュノーケリング経験がある初心者
今後もシュノーケリングを楽しむつもりならば、まずは正しい知識を得てください。
私のブログが全てを網羅しているわけではないので、以前にも紹介したこの本を読んで、自分の技術や知識のチェックをしておくことをおススメします。
シュノーケリング機材の正しい使い方や、基本的な泳ぎ方、海の危険性などを網羅した本としてはベストの一冊だと思います。(著者と私とは何の関係もありませんよw)。
今気づきましたがシュノーケルはドイツ語で、英語だとスノーケルなんですね。となるとシュノーケリングはドイツ語英語のちゃんぽんなのかな?(笑)


・初心者同士のシュノーケリングは場所を選んで
初心者だけでレンタル機材を借りて、シュノーケリングをすることも基本的にはおススメしません。やはりシュノーケリング・サービスの利用が妥当と思います。
どうしてもやむを得ない事情があるならば(どんな事情だ?)場所を慎重に選んでください。具体的には宮古島のシギラ・ビーチのように、シュノーケリングをしている人が沢山いて、いざという時には大声をだせばプロのライフセイバーが駆けつけてくれて、地形的にもイノーの外に出る危険がないところです。
そう考えると、宮古島ではインギャー・マリンガーデンかシギラ・ビーチくらいしかないですね。
その2カ所でも水難事故は起きていますし、インギャー・マリンガーデンは橋に近いところだと外に流される危険があります。シュノーケリングで有名な吉野海岸、新城海岸は離岸流が発生しますし、中之島は水深が深いので、必ずしも安全とは言えません。

・ライフジャケットの着用は必須
自前の装備をもってウェットスーツを着て定期的にシュノーケリングを楽しむ人でない場合には、必ずライフジャケットを着用し、基本的にはシュノーケリング・サービスのガイド下で行うべきだと思います。
その理由は、初心者同士ではトラブルへの対処能力が全くないことと、装備の貧弱さです。装備については次項で説明します。

・定期的にシュノーケリングをやっている経験者に同行する場合。
これは、とてもありがちなケースですが、非常に判断が難しいケースです。
ライフジャケットにシュノーケリング三点セットを自前で持っていて、定期的にシュノーケリングをやっている経験者と一緒に海に行くというのは、良くあるケースです。
ここで大事なのは、場所の選定です。
実際のところ、ライフジャケットにシュノーケリング三点セットで安全に行ける場所は、条件がかなり限定されます。
基本的には海況に恵まれた時で、強い離岸流の発生する危険性がない水深3m以浅のイノーの中に限られるでしょう。そうすればお互いにパニックになる危険性も高くないと思います。
しかしドロップオフの近くや、外洋の潮流が直接入ってくるようなところに行くためには装備の性能が不足しています。また、トラブルの対応能力が無く、同行者にトラブルが起きた時の対処能力もありません。その上、海に慣れ始めているので海を甘くみていはじめる時期でもあります。
この点については次項で説明します。

定期的にシュノーケリングを行い、自前の装備をもっている経験者
いきなり決めつけるのも失礼ですが、私はこのレベルが一番危険だと思っています。
このレベルの人は、何度かシュノーケリング・サービスのツアーに参加してポイントを知っていて、自分でポイントまで行くことはできますが、プロのガイドのように海況をみて安全なポイントを選ぶことはできませんし、海況の適切な判断もできません。サービスのツアーで楽しく安全にシュノーケリングができたのは、プロのガイドがそのようなセッティングをしてくれたからなのです。状況が悪いと、以前に行った場所も全く様相が異なってしまい、最悪の場合には事故につながります。
また、イノー内の安全な場所に飽きて、ドロップオフの近くの落ち込み近辺(リーフエッジ)や、外洋の流れが入ってくる場所に行きたくなるのもこのレベルの人です。
しかし、シュノーケリング機材は、このような場所に行くための十分な機能を持っていません。


このような道具では、リーフエッジや外洋の流れに対してはほとんど役に立ちません。特にこの程度のサイズのフィンでは十分な推進力は得られないので、ちょっとした流れにも負けてしまいます。

もちろん同行者がトラブルを起こさないように適切な配慮をすることや、トラブルが起きた時に対処することもできません。
同行者のトラブルに対処するには、救助者自身が海に潜ることが必要ですが、シュノーケリングしか経験のない人は十分な素潜りの能力がなく、ましてやライフジャケットを付けている状態では海に潜ることができません(ライフジャケットは「強制的に海に浮かばせる」ための道具です)。

なんでも同じですが、「慣れてきたころが一番危険」です。
シュノーケリング・サービスを利用せず、個人でシュノーケリングを楽しむ場合には、絶対にリーフエッジやドロップオフ、水深5m以上の深場、外洋の流れが直接入るところには行かず、イノー内のシュノーケリングにとどめてください。
もちろん一人でのシュノーケリングは絶対に禁止です。ある程度の経験者同士で、常に相手の位置を相互に確認しながらシュノーケリングを行ってください。

どうしてもシュノーケリングで行けるところ以上に行動範囲を広げたいなら、シュノーケリングではなく素潜りを学ぶ必要があります。

シュノーケリングは海のピクニック
「あれはするな、これはするな」と、細かく厳しいことばかり書いてきましたが、シュノーケリングを楽しむ人に絶対に自覚して頂きたいのは「シュノーケリングでできることは非常に限られている」ということです。
第1話 シュノーケリングは危険なスポーツで書いたように登山に例えるならば、シュノーケリングは登山以前のピクニックだと思ってください。
車やケーブルカーで山に行き、その終点のまわりの散策路を歩くのがピクニックです。
ピクニックならば足を滑らせて崖下に落ちることはありません。天候が急変してもすぐに駐車場や山小屋に駆け込むことができます。道に迷う心配もありません。簡単な装備で楽しむことができ、特別なトレーニングや訓練も不要です。
シュノーケリングはあくまでも、この範囲で行うべきです。
間違ってもピクニックの装備や知識、能力で登山道に踏み込んではいけません。
そんなことをするのは自殺行為です。
ドロップオフやリーフエッジ、外洋の流れが直接入るような場所に行くのは、ピクニックではなく登山レベルの話です。
シュノーケリングにおける安全管理は「晴天の日のピクニックの範囲にとどめること」に尽きます。

それ以上のことがしたいなら、素潜りの知識と技術を習得することが必須です。
素潜りは技術も装備もシュノーケリングとは大きく異なります。
普段の訓練やトレーニング、自己管理も必要です。
次回からは素潜りについてお話をさせていだきます。

最後にジジィのぼやき。。。。。
私は子供の頃に、茅ヶ崎の海で水中眼鏡だけして、手銛を持って魚を突くという、メチャクチャなやり方(当時の子供はそれが普通でしたが)で素潜りを始めました。
あれで誰も事故にあわなかったのが不思議ですw
漁村や島の人たちも似たようなものでしょう。

それでも事故が起きないのは、普段から海に慣れ親しんでいることや、上級生がそれなりに下の子の世話をやいて、いろいろと教えたりしていたからだと思います。
あと、今の子供に較べると、圧倒的に野生児だったから、、、かな?

近頃は機材も充実しているし、いろいろなサービスもあるのに、それでも水難事故が後を絶たないのは、海に対する意識や慣れの不足が根底にあるようにも思えます。

さらに怖いのは、今までは一部のマニアの世界だった素潜りやシュノーケリングが、リゾート観光の目玉として商業化され、普段、ろくに海に入ったことが無い人が、レンタル機材を借りて、ネット情報をみて、個人のグループでシュノーケリングを行うことが増えてきたことです。

機材だけレンタルする業者を見ていていつも思うんですが、どうして彼らは技量も経験もわからない相手に、何の不安もなく機材を貸すことができるんでしょうか?
不思議でなりません。

シュノーケリングは、やはりそれなりの危険が伴うスポーツなので、シュノーケリング・サービスを利用して、シュノーケリングが好きになり、今後も行うつもりならば、やはり自前の機材をそろえて、それなりの練習をして欲しいと思います。昔にくらべたら機材は各段に安くなりましたので、何度もレンタルすることを考えれば、買ったほうがお得だし安全だと思います。(三点セットにウェットスーツで、2万円程度でそろいます。シュノーケリング機材を4,5日借りる程度の値段ですね)

機材の購入にあたって注意して欲しいことは、「シュノーケリング向けの機材を買わないこと」です。
シュノーケリング向けとして売られているものは、ダイビング向けの機材に較べるといくらかは安価ですが、その機能や品質は非常に低いものが多いです。
フィンなどははっきり言って役不足だと思います。
もし、生涯の楽しみとしてシュノーケリングをやろうと思っているなら、機材はダイビング用の機材を買ってください。そして週に1回くらいはプールで泳ぐなど、水に親しむ機会を増やしてください。そうすれば、シュノーケリングは体と心の健康に良い、素晴らしい生涯スポーツとなることでしょう。

機材については次回からの素潜り編で解説しますので、お楽しみに。


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シリーズ連載2回目です。
ちゃんとしたご理解を得るためには、かなりの分量になりますし、順を追って説明せずに安易にノウハウをつたえても、本当に役立つことにはならないと思うので、一回に読むのに負担にならない文量に分割して配信しています。
小出しにしているようで申し訳ございませんが、どうぞ気長にお付き合いください。
昔から「生兵法は怪我の元」というように、小手先のノウハウだけを知っていても大自然の力の前には無力です。ノウハウを知ったことで自分は安全だと思うことほど怖いことはありません。
安全対策に関しては何よりも「自然に対する謙虚な心構え」が大事ですので、ぜひ、前回記事もお読みくださいね。

事故事例に学ぶ
全ての事故が痛ましいのですが、ここ数年で最も痛ましく感じた水難事故は、2015年に渡口の浜で起きた事故です。
観光に来ていた子供連れの夫婦と祖父母の6名グループで、シュノーケリングをしていた父、息子(12歳)、娘(9歳)が事故に会い、それを助けようとした祖父(72歳)が巻き込まれ、妻と祖母の目の前で3名が死亡、娘さんが意識不明の重体という悲惨な事故でした。
心苦しい点はございますが、謹んでご冥福をお祈りするとともに、貴重な事例として取り上げさせていただきたいと思います。

この事故の当日は、台風直後の高波が押し寄せて、地元のサーファーがその波を目当てに来るような状況でした。救助にも地元サーファーが活躍していました。
地元の人たちが「どうしてあんな海に子供連れで入ろうとしたのか、信じられない」と言うような海況でした。

状況の悪い海にムリに入って事故にあう。
時間の限られた観光旅行ではありがちなことで、海難事故に非常に多く見られるケースです。

現場から車を5分も走らせれば、波が入らない比較的穏やかな入り江もあって、そこの浅瀬であればこんな事故にもならなかったかもしれません。
亡くなった方を責めるつもりはありませんが、この事故は海と地元情報に対する知識の欠如が招いた側面もあるのではないかと思います。

なぜ、観光客は高波の立っている荒れた海で泳ごうとするのか?
事故の時にはいつも、地元の人は「なぜ、あんな海にはいるのか」と不思議がります。
観光旅行で時間が限られているからムリをしてしまうということもあるでしょうが、そもそも内地の人の「波に対する意識」が「内地の海の波」を基準にしており、それがサンゴ礁の海では全く役にたたないことも原因の一つではないかと、私は思います。

私も台風後の高波の立っている海に入ろうとした観光客に「こんなところに入ったら死ぬぞ」と注意したところ「もっと高い波のところで泳いだこともありますから!」と言われたことがあります。
その時に「この人達は内地の海の感覚でサンゴの海をみているんだ」と気づいたのです。

「私が泳ぎたいんだからかまわないで!」という方に対処する術はありませんが、知識の欠如が原因であれば、それを補うことで無謀なシュノーケリングを減らすことができると思います。
今日は、あまり知られていないサンゴの海の特徴と、その危険性を中心にお話します。

この海をみて、どう思いますか?
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内地の海水浴場であれば1mくらいの波があるのは普通ですから、この程度の波ならば何の問題もない穏やかな海だと思いますよね?
しかし、私には「波が高い危ない海」に見えます。

なぜならこの場所は、普段はほとんど波が立たない場所であることを知っているからです。
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沖に見える島で、同じ場所であることがわかりますよね?
これは特にベタ凪の日の写真ではなく、「普通」がこれなんです。

最初の写真の状態が、普通の時にくらべて、どれだけ波があるかわかります。
特に注意するのは浜辺の波ではなく沖の波です。最初の写真では島影と重なるところに高い波が立っているのがわかります。また、海面にもさざ波が立って、海面がうねっているのがわかりますね。水の色も透明ではなく白濁していて、海底の砂が巻き上げられるほどの強い水の力が働いていることがわかります。
私は、沖の波を見て、浜辺の波をみて、海面のウネリや流れを見て、海水の色を見て、さらに普段の状況と比較して、「危ない」と判断しています。
実を言えば、上の写真は台風が通り過ぎた2日後の写真で、この状況でシュノーケリングをしたら事故が起きても不思議はありません。
そして、このような状況はここの海岸に固有のものではなく、サンゴ礁の海に共通する特徴です。
内地の海の感覚は、サンゴ礁の海では全く通用しないのです。

内地感覚では間違える!サンゴ礁の海の特徴
では、具体的に内地の海とサンゴ礁の海では、なにが異なるのでしょうか?
一番の違いは海底の形状です。これによって波のでき方が全く異なります。
内地の海水浴場の海底は砂で、外洋から浜辺に向かってなだらかに浅くなっています。
それに対してサンゴ礁の海では、浅瀬にサンゴが発達してサンゴ礁(ヒシ)ができ、サンゴ礁の淵でいきなり深くなるドロップオフが形成されます。
ドロップオフの深さは10~20mのところもあれば、いきなり50m以上落ち込むところもあります。
波のできかた

サンゴ礁の海では、ヒシが防波堤の役割を果たすので、外洋からのウネリが当たるドロップオフで波が立ち、ヒシの内側のイノーでは波が立ちません。逆に言えばイノーの中の浜辺に波が立っているということは外洋が相当荒れているということです。その判断にはドロップオフにどれくらいの波が出来ているかが参考になります。

このように、外洋が荒れている時でもイノーの中の波はそれほど高くならないので、サンゴ礁の海の特徴を知らない観光客は、浜辺の波をみて安全とおもって海に入り、水難事故にあうのです。

「波が高くないなら、外洋が荒れている時でもイノーの中は安全じゃないの?」と思われるかもしれませんが、海で怖いのは波よりも潮の流れです。

確かにヒシが防波堤となってイノーの中に波は生まれませんが、外洋からは強いウネリの力によって押し寄せた海水が、イノーの中に大量に流れ込んでいます。そうすると、この海水は逃げ場を探してヒシの切れ目から外洋に戻ろうとします。
その結果、イノーの中からヒシの切れ目を通じて外洋に向かっていく強い流れが生まれます。
これを離岸流(Rip Current)といいます。
水難事故の多くは、この離岸流によって起きています。
離岸流
これは最初の2枚の写真を撮った海岸を上空から見たグーグルマップの画像です。
浜の正面から左側には長いヒシとドロップオフが続いています。右側は漁港への通路として海底を掘って深くした水路があり、ここがヒシの切れ目になるので、イノーに入った海水はここから外洋に戻ります。
しかも水路の手前に護岸が作られて外洋への出口が狭められおり、護岸に沿った流れも発生するため、太い矢印で示した部分は川のように強い流れが生まれます。
普段はそれほどでもありませんが、少し強いウネリが入っただけでも、戻ってくることが困難になるほどの流れです。
私も一度、大潮の時にこの流れにつかまり、浜に戻るのをあきらめて漁港から帰ってきたことがあります。台風や荒天の後でなくても条件によっては、そのような流れが生まれるのですから、最初の写真のように海が荒れている時だったら、漁港に戻れたかどうかも危ないでしょう。

砂底の海岸でも海底の地形によって、離岸流が生まれますが、サンゴ礁の海では海底の形が複雑で、水深の差が極端に大きいので、その流れも非常に強く複雑で、一見しただけでは予測しにくいのです。
サンゴ礁の海は浜辺の波が低くても、外洋の波が高い時は危険!
ということを憶えておいてください。

離岸流の予測は困難
離岸流は浜辺に打ち寄せた水が、沖にもどりやすい場所を通って沖に帰るという自然の摂理でできるものなので、常に特定の場所で起きる特殊なものではありません。海のいたるところに発生する、自然な水の動きです。
基本的には波が立っているところは沖から岸に向かう流れ(向岸流)が発生していて、波が立っていない場所は岸から沖に向かう離岸流が発生していると考えられますが、その強さや方向を見分けることは困難です。

離岸流はサンゴ礁の海にだけ起こるものでもなく、海底が砂地の海でも、いたることろで発生しています。(打ち寄せた海水は沖にもどらなければ津波になってしまうので、当然のことです)
痛ましい事故がおきた渡口の浜も、ドロップオフが形成されるようなサンゴ礁の地形ではなく、遠浅の砂底の海で、絶好の海水浴場に見えます。
しかし、ここは外海から直接潮流が入り、浜が袋小路状になっているため、沖からの水が集まりやすく、そのために波の強い時には状況が一変して、非常に強い離岸流が発生します。
推測でしかありませんが、この事故は離岸流に流された子供がパニックになり、それを助けに行こうとした親も離岸流につかまってしまったことが原因の一つと思われます。
渡口の浜のように海底が砂底の場合には、荒波で海底の形が変わると思わぬところに離岸流が発生するので、どこに離岸流があるかの予測は非常に困難です。
渡口の浜で海水浴をするなら、腰より深くには入らないほうが安全です。
渡口の浜
宮古島で同様の地形のところはいくつかありますが、シュノーケリングで有名な中の島とインギャーマリンガーデンも入江の中に入った海水が強烈な沖出しの離岸流を作る場所として知られています。
中の島は湾内のサンゴ礁を越えたところ(ダイビングボートが留まっているあたり)、インギャーは橋の下まで行くと、波の強い日には一気に沖に吸い出されます。
どちらもリーフ内は安全な場所なので、海況が悪い時でもシュノーケリングをやっている方を見かけますが、一歩間違えると危険な海に変わりはありません。
実際にインギャーでは橋の下から沖に流された事故が起きています。
また、天然のプールで安全に思えるシギラリゾートのシギラビーチは、海に向かって右側の奥に近寄ると沖に吸い出されるので、ここも注意してください。

離岸流をいつ、どこに発生するか正確に予測することは困難なので、「強い波によって大量の海水が浜に押し寄せている時は、離岸流も強くなる」という原則を忘れずに、「君子危うきに近寄らず」と海に入らないのが最大の安全対策と言えるでしょう。
「離岸流」で動画を探すとたんさんのものが出てくるので、参考にしてください。
この動画は良くまとまっているのでおススメです。



強い離岸流につかまったら、水泳のオリンピック選手でも、ロングブレードのカーボンフィンを履いていても、離岸流に逆らって泳ぐことはできません。そして水難事故の多くは離岸流が関連すると言われています。繰り返しになりますが、
波が高い時は強い離岸流が起こりやすい
という自然の法則を忘れずに
波が高い時(サンゴ礁の場合は浜ではなく沖で高い波が立っている時)には海に入らないのが鉄則です。

追記:
サーフィンは離岸流に乗って沖にでて、向岸流でできる波に乗るスポーツなので、かれらは離岸流を見つけるのが上手です。
離岸流には魚があつまるので釣り師は離岸流の見つけ方を良く知っています。
サーフ釣りでの離岸流の見分け方
離岸流の見つけ方
離岸流の予測はできなくはないんですが、サーファーや釣り師はシュノーケリングをやる人に較べると海に行く回数が圧倒的に多く、多大な経験と観察によって、離岸流を見分ける力を身に着けています。
また、彼らは同じポイントに何度も通って、海底の地形まで熟知しています。
彼らの知識は参考にはなりますが、年に数回しか海に行かず、初めて行った海で泳ぐことが多いシュノーケリング愛好者には離岸流の判別は無理だと思います。

次回は、離岸流への対処法を含めたシュノーケリングを行う時の注意点をご紹介いたします。


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サニツが過ぎて宮古島は海開き。
ゴールデンウィークには、また沢山の方々が世界最高の宮古島の海でのシュノーケリングやダイビングを楽しまれることでしょう。
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沢山の方々に宮古島の海の素晴らしさを知っていただくのは、まことに嬉しいことですが、二つだけ観光客の皆様にお願いしたいことがあります。

一つは、自然を壊さないこと。
もう一つは、絶対に海で死なないこと。
その二つです。

ご存じないかと思いますが、宮古島では毎年、沢山の観光客が海で事故にあっています。
特に2018年度は過去最多のペースで増加しており、9月までの事故者数は19名。そのうちシュノーケリング中が7名、シュノーケル無しの遊泳中が4人、ダイビング中が3名、スタンダップ・パドルボード(SUP)での行方不明が1名と、マリンレジャーでの事故が過半数を占めています。
2013年から5年間での水難事故者数は13年が6人 、14年が8人 、15年が13人 、16年が19人 、17年が11人。 内容別ではシュノーケリング中が22人、シュノーケルなしの遊泳中が13人と、シュノーケリングでの事故が後を絶ちません。
そのほとんどはガイドのいるツアー中ではなく、友人、家族などの個人でシュノーケリングを楽しんでいた方々です。

シュノーケリング事故増加の背景には、観光客の増大、行政の不十分な安全対策、知識・技術の未熟な低レベルのマリン業者や個人ガイドの乱立など、さまざまな原因があると思われますが、最大の原因はシュノーケリングを行う人の意識だと、私は考えます。

宮古島に移住してからシュノーケリングを楽しむ方々を沢山みかけてきましたが、中には「こんな海況に、その装備で入ったら死んでも不思議はないよ」という人を何人も見かけました。
もちろんお声をかけさせてはいただきますが、それでシュノーケリングをやめた方はいません。中には逆に文句を言う方までおられる始末です。
幸い、私がご注意させていただいた方が水難事故にあったという記事は見かけませんので、無事に帰られたのだろうと思います。
しかし、それは「偶然、無事に帰ることができた」のであり、そのような危険度の高いシュノーケリングを繰り返していれば、いつかはその幸運が尽きる場面にであうことでしょう。

これから書くことは、海で亡くなった方を批難することが目的ではありません。
子供の頃に素潜りを覚え、それから半世紀近く世界の海を潜り歩いてきた末に、宮古島の海に惚れて移住したジジィの私見と思ってお読みください。

とはいえ、私は「シュノーケリングは常にガイド付きのサービスで行うように」などとと、シュノーケリングが持つ素晴らしい自由を損なうつもりもありません。
金銭的にも荷物的にも大きな負担とならない程度の装備で、旅の途中で見つけた素敵な浜辺から海中の
別世界を訪れるのは、シュノーケリングの最大の愉こびです。

私の願いは、この素晴らしいスポーツを楽しむ人が、正しい知識を持って必要な準備をすることで、水難事故にあう危険を減らすことです。
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シュノーケリングはスポーツです
シュノーケリングや素潜りは、登山と良く似ています。両者の共通点は、いずれも自然を相手にする「スポーツ」だということです。
夏の好天ならばスニーカーで気軽にレジャー気分で登れる山も、ひとたび天候が急変すれば遭難者がでる「魔の山」になります。実際に、ケーブルカーの終点から3時間で往復できるような場所でも、急な悪天候による大量遭難の報道をしばしば耳目にします。
自然のご機嫌が良い時にはお手軽お気軽「レジャー」であっても、ひとたび状況が悪化した時には「スポーツ」としての知識、技術、体力、装備がないと人は死んでしまうのです。
シュノーケリングで事故にあわないためには、スポーツとしての心構えがなによりも大切です。
どんなスポーツでも最初は本の一冊でも読んで、必要な知識を得るのが普通ですが、シュノーケリングに関してのガイドブックはあまり多くありません。
その中でもおススメできるのがこの本です。シュノーケリングの基本技術や装備、海での危険、緊急時の対処など、まず最初に知っておくべきことが過不足なく網羅されている良書です。
シュノーケリングを始める方はもちろん、経験者でも読んでおくと、間違った知識や知らなかったことに気づくでしょう。



海は人間が住めないところ
夏にハイキングで行くような山は人間が生存可能な場所ですが、海中で人間が暮らすことはできません。
つまり、海に入るということは人間が住めない場所に行くということです。
登山なら厳冬期に3000mの山に登るようなものでしょう。海で遊ぶにはそれくらいの慎重さが必要だと思います。
都会育ちの人でも、山ならばある程度の知識もあるでしょうし、常識的な判断で対応できる部分もあるでしょうが、私たちは海について、ほとんど何の知識も持ち合わせていません。
海の中に何がいるのか、海の中がどうなっているのか、海の水が人間にどう働きかけるのか、人間は海の中でどれだけの行動ができるのか、これらについては何も知らないのです。
人間の常識は海では無力です。海に対して、どれだけ謙虚にふるまっても、それが過ぎるということはないでしょう。
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シュノーケリングは「お手軽」ではない
スキューバダイビングは認可団体のインストラクターによる講習を受け、多くの機材の適切な取り扱い方を学び、海に入る時もプロショップのガイドに案内してもらいます。
それに対してシュノーケリングは、マスク、シュノーケル、フィン(足ひれ)を買えば、誰でもどこでも一人でも自由気ままに楽しむことができる「お手軽」「お気軽」な遊びと思われる方が多いようです。

本当にシュノーケリングは「お手軽」でしょうか?

ロッククライミングでは、岩壁に穴を開けてアンカーを打って、二人でお互いに安全確保をしあいながら登る方法よりも、単身で岩の隙間に取り外し可能な器具を入れただけで登るフリークライミングのほうが困難です。究極はなんの道具も安全確保もせずに素手素足で登ることでしょうが、それはあまりに危険すぎます。
登山であれば、大編成のグループでテントや食料や酸素ボンベを担ぎ上げて、キャンプを作りながら登頂するよりも、単独で最小限の装備だけで短時間で登るほうが圧倒的に困難です。
つまり、自然相手のスポーツは道具が少なくなるほど、困難さが増すのです。

スキューバダイビングであれば、ガイドが海の状況を見て、安全に楽しく潜れるポイント選び、安全な方法でそこに連れて行ってくれます。途中でアクシデントがあれば適切に対処してくれますし、助けてくれます。ボートエントリーであれば、トラブルがあればすぐにボートの上に引き上げてくれますし、そこには救急キットが完備されています。
しかしシュノーケリングではどうでしょうか?

友人と二人で浜辺から海に入った時、沖合で友人のフィンが外れて水中深くに沈んでしまったり、何らかの理由で友人が身体のトラブルやパニック状態になって泳ぐことができなくなった場合、あなたは友人を安全に浜辺に連れ戻すことができますか?それがもし自分だった場合、あなたは自分をコントロールして、冷静に対処できますか?
思わぬ潮流に流されて、気が付いたら浜に戻れないところまで流されたらどうしますか?
もし、あなたが独りでシュノーケリングをしていた時に、それが起きたらどうしますか?
最低限の装備もたないシュノーケリングでは、トラブルに遭遇した時に対処できる可能性も限られています。ガイドがいれば適切な処置を施してくれるでしょうが、その対処できる範囲もさほど大きくはありませんし、ガイドがいなければ自力で対処するしかありません。

登山では天候の急変や怪我、病気などで登頂を諦めた時に、安全に帰るためのエスケープ・ルートをあらかじめ計画に入れておきます。また、電子機器が発達した現在では、常に下界との連絡が取れるような装備が必須になっています。
トラブルは起きてから対処を考えるのではなく、起こりえるトラブルを事前に想定し、その場合の対処法を考えることが最大のトラブル対策になるのです。

シュノーケリングは手軽に行うことができますが、シュノーケリングを安全に行うことはけっしてお手軽でも、お気軽でもありません。
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世界チャンピオンの言葉
自力で潜って帰ってくる素潜りの限界は水深80mくらいではないか?と言われていた、20年以上昔の話です。(ちなみに現在の世界記録は129mです)
ようやくフリーダイビングの国際大会が始まった頃、当時の世界チャンピオンと1週間ほど寝食を共にして、素潜りを教えていただく幸運な機会がありました。
その時にチャンピオンが仰った
「人間は海が許してくれる時に、許してくれる場所までしか行くことはできない。大事なのは「お前はそこにいてもいいよ」という海の声を聴くことだ。それを無視して傲慢に振舞ったら海は絶対に許してくれないよ」
という言葉が今も心に残っています。

具体的な安全対策、知識、技術に関しては、これからご紹介します。
しばらくこのシリーズを続けますので、ぜひご一読いただき、安全にシュノーケリングを楽しんでいただくことを願います。
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このシリーズは、
サンゴの海は内地と別物
シュノーケリングの安全管理
の3回シリーズです。

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